フェルチと思い出
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![]() ファムのことが心配で、思わず天上岬を飛び出してしまったフェルチ。 | ||
![]() | ここで待っていれば、ファムたちに会えるかも。 | |
![]() | でも、ファムをひとりで送り出したのは私……。 | |
![]() | 今になって、心配になって追いかけてきたって知ったらファムはなんて思うかしら……。 | |
![]() | あーもう、私のバカ! もう少し、考えてから家を出るべきだったわ! | |
![]() | あ、き……来た!? あの声は、きっとファムたちの声ね。 | |
遠くから、ファムとヤネットの一団が向かってくるのが見えた。 | ||
![]() | どうしよう? 偶然を装って、ここで飛び出していく? それとも……。 | |
迷ったあげく、フェルチは隠れることにした。 | ||
決意して送り出した手前、今更、ファムに会わせる顔がない。 | ||
![]() | ファム……それに、あれは黒猫の魔法使いさん? そう、ファムと一緒に旅してくれてるのね。 | |
フェルチは胸をなで下ろした。 | ||
心配して追いかけてくる必要はなかったかもしれない。 | ||
![]() | 素材集めはうまくいってるのかしら? でもその道は……。 | |
ファムの一行は、森の奥へと向かう道を避けるように進んでいく。 | ||
![]() | あの先には、確か「木漏れ日の街」があるはず。お母さまの話によく出て来た……。 | |
フェルチは、しばらく思案してから、決心したように道の奥へ引っ込んだ。 | ||
![]() どうして君たちが、ついてくるのさ? | ||
ナルナたちは、次の素材を手に入れるために、目的の場所へ向かっていた。 | ||
ついてくるもなにも、僕らの行き先も同じですからね。 | ![]() | |
というか、ついてきてるのはそっちの方にゃ。 | ![]() | |
月輪花を手に入れたファムたちは、次に「煌蛍」という素材を手に入れるつもりだった。 | ||
![]() 煌蛍……。名前からは、どんな素材か想像つきませんが、なんとなくこっちにある気がします。 | ||
![]() | なぜわかる? | |
なんだか、見覚えがあります。この景色……。遠い昔、ここに来たことがあるような。 | ![]() | |
子供の頃、天上岬から出たことがあるのかにゃ? | ![]() | |
わかりません。はっきりとは覚えてないです。でも……。 | ![]() | |
ファムは、落ち込んだように下を向いた。 | ||
お姉さまならなにか知ってるかもしれません。 | ![]() | |
![]() | それよりも、道は合ってるのですか? 煌蛍がありそうな気配は、ありませんが? | |
![]() | ん? ちょっと待ってください。あそこに看板が立っています。 | |
本当にゃ! なになに……「調香師のみなさんはこちらへ」……? | ![]() | |
やっぱり、こっちであってましたね! | ![]() | |
![]() | わざわざ看板を立てておくなんて、なんだかうさんくさいですね。 | |
いいえ、きっと大丈夫です。そんな予感がします。 | ![]() | |
珍しくファムは、みんなを先導して進む。 | ||
![]() | リグス……。 | |
![]() | 行ってみよう。 | |
それを見たナルナたちも、ファムのあとについていく。 | ||
![]() | 決して油断しないことです。煌蛍は簡単に手に入るものではありません。 | |
![]() | なにが待ち受けているのか……僕の持つ本には、まったく書かれてません。 | |
本に書かれていることが全てじゃないにゃ。 | ![]() | |
![]() | そんなことはありません! この世のことは、全て本に記されています。 | |
![]() | 少なくとも、僕はそう信じてます。 | |
ま、行ってみればわかるでしょう。不安ですが……なんだかドキドキしますね。 | ![]() | |
![]() 君は、ファムたちと共に木漏れ日が差し込む路を進んでいく。 | ||
![]() | 森の奥に、こんな綺麗な街があったなんて……。 | |
緑の葉で覆われた自然の屋根。 | ||
君たちは、黄金色の木漏れ日を浴びながら、枯葉を踏みしめて進んだ。 | ||
![]() | でも、この街には人の気配がまったくしないわね。 | |
静まり返った街の様子に、君たちは薄気味の悪さを感じていた。 | ||
![]() | ……不吉な予感がする。くれぐれも油断するな。 | |
まさか、またあの魔物ハンターが襲ってくるのかにゃ? | ![]() | |
リグスは、ウィズの言葉を鼻で笑い飛ばす。 | ||
![]() | エリークならまだいい。もっと厄介な相手が、出てくるかもしれんぞ? | |
厄介な相手って誰にゃ? | ![]() | |
リグスの言葉に反応したように──唐突に森の木々がざわめき始める。 | ||
フモーフちゃんたちが騒いでます! とっても嫌な予感がします……。 | ![]() | |
魔法使いさん! | ![]() | |
君は、ファムの前に進み出て彼女を守る。 | ||
![]() ここは、お前たち人間が来るべき場所ではない! | ||
で……出たにゃ!? | ![]() | |
ナルナ、下がっていろ! | ![]() | |
リグスもマテリアル弾を放つ銃を握りしめて、ナルナをかばった。 | ||
もしかして、この森の住人でしょうか? | ![]() | |
そんな生やさしい相手に見える? あんたのその神経の図太さがうらやましいよ。 | ![]() | |
えへへ、そうでしょうか……。 | ![]() | |
褒めてない! | ![]() | |
![]() | 我は、この森の支配者。我が一族を人の手から守るためにここにいる。 | |
![]() | 警告は一度だけだ。人間たちよ、我らを怒らせないうちにとっとと立ち去れ! | |
ミルニーモと名乗る森の支配者の背後に、別の気配を感じる。 | ||
彼女の仲間である、この森の妖精が集まってきた。 | ||
聞いてください。私たちは、あなたたちに危害を加えようとは……。 | ![]() | |
![]() | そう言って、人間たちは我らを騙してきた。もう、人の言葉に耳を貸さん。 | |
話し合うつもりはないということですか? | ![]() | |
魔法使いさん。こういう場合、どうしたらいいのでしょう? この先にある素材がないと── | ![]() | |
奇跡の香水は、作れない。 | ||
だけど、森の妖精たちを怒らせたら、この森から無事に出られないかもしれない。 | ||
![]() | フロリアという人間が、かつてここに来た……。 | |
フロリアが? やっぱり、ここに素材があるんだね!? | ![]() | |
お母さまが、ここに来たことあるんですか? | ![]() | |
ちょっと待て、フロリアのことをお母さまって……? | ![]() | |
![]() | 貴様、フロリアの娘か? | |
は、はい! | ![]() | |
![]() | あの女のせいで、この森は騒がしくなった。それまで、ここは静かな森だったのだ。 | |
そんな……お母さまは、この森にある素材を使っただけです。 | ![]() | |
![]() | 黙れ! 我らの静寂を奪った罪を償ってもらうぞ! | |
ミルニーモが叫ぶ。 | ||
すると、森全体がそれに反応してうごめき出す! | ||
参りました。これは、本に書かれていないパターンです。 | ![]() | |
だから言ったにゃ! | ![]() | |
どうやら、戦うしかないようだ。 | ||
君は、覚悟を決めてミルニーモに向き合った。 | ||
(戦闘終了後) | ||
![]() うう、おのれ。人間どもめ……。 | ||
もうやめるにゃ! | ![]() | |
勝負は決した。 | ||
それでもミルニーモは、自分たちの森を守るために戦う姿勢を崩そうとしない。 | ||
森を破壊しに来たわけじゃないことを、どうにかしてわかってもらいたいが……。 | ||
妖精さん、やめてください。もう戦うのは無意味です。 | ![]() | |
私のお母さまが、ここの素材を使ったせいで森を騒がせたのでしたら謝ります。ですから……。 | ![]() | |
![]() | うるさい! 今更、人の言葉に耳を貸すつもりはないわ! | |
最早、ミルニーモは言葉が通じる状態ではない。 | ||
リグス、こういうときはあれを……! | ![]() | |
そうだな。ナルナの力を借りよう。みんな、下がっていろ。 | ![]() | |
どうするにゃ? | ![]() | |
リグスは、持っている銃の弾倉に、今までとは違うマテリアル弾を装填する。 | ||
![]() | 立ち去れ、人間ども! | |
少し、頭を冷やしてもらうか! | ![]() | |
リグスの銃から放たれるマテリアル弾は、ミルニーモに当たる直前に爆ぜた。 | ||
![]() | なっ!? これは……!? | |
割れた弾薬から、甘い香りが立ちこめる。 | ||
私が調香した鎮静効果を持つ香水だよ。その名も「お昼寝したくなる香水弾」──。 | ![]() | |
![]() | なんだこれは……。ううっ……。ダメだ、たまらなく眠い……。 | |
魔物専用の香水だけど、妖精にも効果あるみたいだね。 | ![]() | |
地面の上で身体を丸めたミルニーモは、すぐに穏やかな寝息を立てはじめる。 | ||
凄い効果にゃ! こういうのがあるなら、もっと早く使って欲しかったにゃ。 | ![]() | |
![]() | こちらの奥の手だ。そう簡単に手の内を見せるわけにはいかない。 | |
そんなに私たちを警戒しなくてもいいのに……。 | ![]() | |
ミルニーモが呼び寄せた妖精たちは、蜘蛛の子を散らすように去っていった。 | ||
君はもうこの森の妖精たちと戦わなくていいようだ。 | ||
うーん、とっても甘い香りです。ふぁ~あ、なんだか、とても眠くなってきました……。 | ![]() | |
ファム! ナルナの香水を吸っちゃダメにゃ!? | ![]() | |
でも、凄くいい香りなんですよ。なんだか、お姉さまに会いたくなってきました……。 | ![]() | |
ナルナが、ファムに近づいて目覚ましのビンタを放った。 | ||
![]() | ここで眠ってもらっちゃ困るよ。フロリアが、「お母さま」ってどういうことだよ? | |
そのまんまですよ~。私のお母さまは、調香師のフロリアなんです~。 | ![]() | |
香水効果が効きはじめたファムは、とても眠そうだった。 | ||
あんたが、尊敬する調香師フロリアの娘だったなんて……。 | ![]() | |
![]() でも、私はお母さまのことをなにも知らないのです。私が小さい頃に亡くなったので── 顔も覚えていないですし、抱っこされた記憶も残ってません。なにも知らないのと同じですよ~。 | ||
![]() | まさか伝説の調香師の娘さんと一緒に旅ができるなんて。あとでサインしてもらえませんか? | |
ふふふっ、なんでもいいですよー。 | ![]() | |
そのまま、ファムは君の胸に倒れ込んだ。そしてそのまま眠りにつく。 | ||
ナルナ……ショックを受けてるにゃ? | ![]() | |
![]() | そんなことない。ただ……尊敬するフロリアと親子だなんて、ファムがうらやましいよ。 | |
君は、ファムの閉じた目に涙が流れているのに気づいた。 | ||
![]() | 母親といえど、フロリアのことはなにも知らない……か。 | |
娘なだけに余計に辛いかもしれないにゃ。ファムは口に出さないけど……。 | ![]() | |
ナルナはなにも言わなかった。じっと、ファムの寝顔を見つめている。 | ||
![]() | 妖精が力を失った以上、俺たちを遮る者は誰もいない。 | |
![]() | そうね。先に進みましょう。 | |
こっちは、ファムが目を覚ますまで動けないにゃ。 | ![]() | |
せめて素材を残しておいて欲しい、と君は先を行くナルナたちの背中を見つめながら願った。 |
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