カマラ

深き瞑想によって心を澄まし、さらなる高みを目指す者たちの異界――
その土地で、カマラは『聖仙』と呼ばれる偉大な賢者の子として生まれた。

十四になったカマラは、世界各地を渡り歩く修行の旅に出て――驚いた。
世間では、瞑想や精神修養はすっかり廃れた文化となっていた。

富や栄達を求めて騙し合い、蹴落とし合うのが当たり前。
人々の心は荒みきり、高みを目指すどころではない。

「これじゃいけない……聖仙の教えを広めて、人々に澄んだ心を取り戻さないと！」

決意したカマラだが、彼女がいかに道端で教えを説いても、耳を貸すものはなかった。　
道の脇にしゃがみ込んで肩を落とすカマラに、小さな男の子が近づいてきた。

「おねーちゃん、どうして落ち込んでるの？」
「みんな、あたしの話を聞いてくれないんだもの……」
「そりゃあそうだよ。おねーちゃんのお話、むずかしくってつまんないもん」

がーん、とカマラはショックに襲われた。

確かに、彼女の説く『聖仙の教え』は、堅苦しく、難解な部分が多い。
教えの内容がどれだけ優れていても、そもそも人々に興味を持たれないのだ。

「でも……そこをどうにかすれば、教えを伝えることはできるかもしれないよね」

カマラは、すっくと立ち上がった。

「『明るく・楽しく・わかりやすく』！　これでいってみよう！」

――その後、道ゆく人に軽妙な歌と踊りを披露する『歌って踊れる聖仙』の噂は瞬く間に広まり、たちまち大評判となった。

また、彼女の曲『金科玉ＪＯ！』は、明るく楽しいメロディながら、
よく聴くと歌詞に深い意味が込められているとして、世界中に伝わっていくことになる。